愛してもいいですか
「神永、そっちの会社には慣れた?」
「えぇ。基本的な仕事はあまり変わりませんし、社員の方々も親切ですから。いい環境で働かせていただいてます」
日向と同じく運転手の役目があるのだろう神永は、グラスの中のウーロン茶を飲みながら、相変わらず真面目なのがよく伝わってくる表情で答える。
「神永はよく働くいい男だぞ。さすが、ワガママな娘の下で何年も働いただけある!」
「ちょっと。どういう意味よ」
キッと睨む私を気に留めることもなく、お父さんはハハハと笑って日向へ視線を向けた。
「日向くんは、よくやってくれているようだな。常々話は聞いているぞ」
「いえ、そんな。まだまだ神永さんの仕事ぶりには敵いません」
「謙遜するな。先日のパーティで架代が着ていたドレスも君の見立てだそうじゃないか。娘ながら綺麗だったぞ。なぁ?神永」
「えぇ、とても」
話す時間はなかったものの、私の姿は見ていたらしい。お父さんと神永のふたりにうんうんと頷かれ、なんだか恥ずかしくなってきてしまう。
「架代さんが綺麗なのは元からですよ。どんなドレスを着たって、口開けて昼寝していたって美人は美人です」
そんな一方で日向はにこっと笑うと、いつの間に撮ったのか……携帯の画面に私のマヌケな寝顔の写真を表示させ、ふたりへと見せる。
社長室のデスクの上、頬杖をつき口を半分開けた、どう見てもマヌケな顔。『美人』と言いながらこれっぽっちも思っていないのであろうことは、簡単に伝わってくる。