愛してもいいですか
「松嶋さんもお疲れさまでした。来客多かったから大変だったんじゃないですか?」
「はい、ずっと動きっぱなしでバタバタで。でもあんな綺麗な宝井さんを見られたからよかったです」
はは、と笑う松嶋さんに、照れながらグラスを置くと、目の前の皿の肉を食べようとフォークを手にする。
「あの後宝井さん見かけた時男の人といたけど……もしかして、あれが秘書ですか?少し背が高くて、可愛い感じの顔の」
「え?あ……えぇ」
思い出したように言う彼の述べる特徴から、想像できるのは日向の顔ひとつ。そもそもあのパーティの日は日向がべったりガードしていたから、他の人といた可能性はないし。
そう考えながら、ソースのかかった肉を一切れ食べ頷く。
「へぇ……。思ったんですけど、あの彼モテます?」
「わかります?軽そうでしょ」
「というか、気遣いが上手そうだし、宝井さんのこともよく見てる感じがしたので」
私の、ことを。その一言につい小さくドキリとする心。
……私のことをよく見ているのも、秘書だから。そう。だからいちいちドキリとする必要なんてない。
あぁもう、日向のこと考えるなんてやめ!すぐ浮かぶあの顔を記憶のなかで振り払い、口のなかの肉の味に意識を向ける。
そんな私に、目の前の松嶋さんはグラスをテーブルに置きこちらを見つめた。