愛してもいいですか
「……ごめん、なさい。さすがに、今すぐは答えられない」
「あはは、分かってます。気長に待つから、じっくり考えてください」
「……はい」
「でも、ひとつだけ忘れないでください。俺自身が、社長でもなんでもない宝井さん自身を想っていること」
その場で私が二つ返事で頷けないことは予想していたのだろう。そう伝えると、私と同じようにフォークを手にする松嶋さんは至って穏やかだ。
私自身を、想っている。例え彼は私が社長じゃなくなっても、お父さんのことも気にすることもなく、結婚したいと言ってくれている。
「な、なんか真面目な話すると照れますね。すみません、いきなり」
「いいえ、ありがとうございます。伝えてくれて、嬉しいです」
今になって実感がわいてきたのか、照れるように笑う表情はなんだかとても可愛らしい。
「そういえば、今度の土曜って休みですか?」
「え?あ、多分仕事だけど……日曜も仕事になってるから、予定さえ入ってなければ休みは貰えるかもしれないです」
「本当ですか?じゃあその日に、たまには昼間から出かけませんか?車出しますから、ドライブでもどうです?」
「ドライブ?いいですね、じゃあ明日予定確認してみます」