愛してもいいですか
日向は、笑うかな。いつも偉そうに、強気で物を言う人間が、いい年してこんな風に子供のように泣いて『怖い』だなんて。
だけど、抑えきれないよ。本音をこぼしてしまうよ。
どうしてか、いつも。日向の前では隠せないから。
「私、一生結婚なんて出来ないんだぁぁぁ〜っ……」
気持ちが高ぶるまま、子供のようにわぁぁと泣き出した私に日向は少し戸惑う。そして伸ばした両手で私の顔を包むように触れると、指先で涙をそっと拭った。
「大丈夫です、だから泣かないでください」
「大丈夫じゃない〜っ」
「大丈夫ですってば」
涙で滲む視界では、日向がふっと笑顔を浮かべる。
「架代さんを社長として支えて、一人の女性として愛する人もきっといる。だから、不安になる必要なんてないです」
「……そんなの、嘘」
「嘘じゃないですよ。絶対、いる」
私の全てを、受け入れてくれる?
そんなの嘘、そんな人いない、そう思うのに。彼の揺らがない声は、信じられる気がしてしまう。
「……そんなこと言って、いなかったらどうするのよ」
「その時は責任持って、俺が貰ってあげましょうかね」
冗談じみた言葉と、ははっと見せた笑顔。その瞬間、日向は私の顔から手を離し体をそっと抱き締めた。
包み込むような、力強い腕と日向の匂い。長く外にいたせいかひんやりとした体温が伝う。
その笑顔と余裕が、少し悔しくてむかつく。だけど、優しい腕がほどけずに身を預けてしまう。