愛してもいいですか
「……いい。悪いけど日向にやってもらうほど散らかってないから。帰って」
『そうなんですか?わかりました、じゃあ失礼しまーす』
カメラを切り、部屋へ目を向ければ先程の言葉とは真逆にぐちゃぐちゃに散らかった汚い部屋。
誰かに手伝って貰いたい気持ちはあれど、こんな部屋を見られるなんて社長としても女としても嫌だ。
……それにしても、随分引き際がいいわね。日向のことだからもう少しごねてもおかしくないのに。
まぁ日向だって成人男性だものね、いきなり女の部屋に訪ねて来てすんなり入れて貰えるわけなんてないことくらい分かっていた、か。
うんうんと納得し、また横にでもなろうかと寝癖ではねた髪をかく。すると突然玄関のほうからは、ガチャガチャ……ガチャンッと鍵の開く音。
「……へ?」
何事だろう、と目を向ければそこにあったのは開けたドアから姿を見せた、日向。
「おはようございます、架代さん」
先程インターホンのカメラで見たものと変わらない笑顔。格好はクレーのカーディガンに白い丸首シャツ、深緑色のパンツ……と、珍しい私服姿。
日頃スーツを見慣れているせいか、私服だと若く見える……ってそうじゃなくて!
「な、なんで!?どうやって入ってきたの!?」
「え?あぁ、英三社長のほうからエントランスのロック解除のナンバー聞いていたのと、鍵も預かりましたので!」
「私のプライバシーは無視!?」
お、お父さん……いくら秘書だからって、信頼しすぎでしょ!?ていうか日向も、本当に入ってくるんじゃないわよ!
日向は笑顔のまま靴を脱ぐと、まじまじと部屋のなかを見る。