愛してもいいですか
「さて、そこそこ服もまとまったし……一回洗濯機回しますか。架代さん、洗濯機は回せますよね?」
「……回したことはないけど、やろうと思えば出来るはず」
「うん、じゃあ一度きちんと教えましょうねー」
呆れたように笑いながら、日向は服の入ったカゴを手に脱衣所へと向かう。
「普段家事はどうしてるんですか?」
「ハウスキーパーとか、実家のお手伝いさんに来て貰ったりとか」
「そういう所はお金持ちの考えてすねぇ。結婚したらどうするつもりだったんです?」
「結婚すれば自然と覚える予定なの!」
覚えられるのか、そもそも出来るのか。根拠も自身もないけれど、そう思って疑わずにいる自分が恐ろしい。
「それに今の時代は何事も夫婦で協力してやるものよ。私の苦手なことを相手がして、相手の苦手なことを私がすればいいの」
「へー。じゃあ、架代さんの出来ることというのは?」
「……仕事、とか」
「あっはっはっは!立派なヒモ男を育てあげそうですねぇ!」
っ……この男……!!
日向は思い切り声をあげて笑いながら、まだ綺麗な洗濯機のフタを開けタオルや靴下などを入れていく。
「タオルと服は基本的に別々に洗った方がいいので、分けてください」
「どうして?一気に洗っちゃえばいいじゃない」
「タオルのケバや糸くずが服について余計面倒なことになりますから。あ、あと下着はネットに入れて、色物はまた分けて……」
手際よく行うと、洗剤を一杯入れボタンを押す。ゴウン、と回りだす洗濯機に日向はよしとまたリビングへ戻った。
「今日は洗濯・掃除・アイロンまで終わらないと帰りませんからね!」
「は!?何勝手なこと言ってるのよ!」
「貴重な休日を潰したくなかったら、早く掃除終わらせちゃいましょう」
換気をするようにカラ、と開けられたリビングの大きな窓。肌寒い風に栗色の髪を揺らす。
なによ、勝手に話進めて……。
別に、自分でやらなくたってハウスキーパーを呼べばすぐじゃない。休日くらい休ませてよ。そう、思うけれど。
「わかったわよ、やってやるわよ!」
その笑顔に拒むことも出来ず、髪をヘアゴムで結って私も袖をまくった。