愛してもいいですか
「綺麗になりましたねぇ、架代さんも疲れたでしょう?」
「えぇ。掃除ってこんなに疲れるのね……」
「世の中の主婦は毎日これに加え食事の支度や家族の世話もするんですから、すごいですよねぇ」
「本当、頭が上がらないわ……」
カップを手に取り一口飲む。喉を伝う熱いお茶に、疲れがどっと込み上げてきた。
少し休憩……。そうソファに横になろうとする私に、日向は不思議そうにこちらを見る
「少し休みますか?」
「えぇ、適当にテレビでも見てていいから。洗濯物しまう時間になったら起こして」
「わかりました。じゃあ、」
そしてなにを思ったのか、ポンポンッと自分の太ももを示すように叩いた。
「へ?なによ」
「イケメン秘書の膝枕で、ゆっくりお休みください」
「……いい」
膝枕って……そんな、子供じゃあるまいし。ふん、と断る私に「いいからいいから」と私の頭を自分の膝へ押し付ける。
強引な男……!
けれど、ズボンの布越しに感じる、動いた後で少し熱いその体温と、ふわりと漂う日向の匂い。
それらが心をドキ、と鳴らすと同時に居心地の良さを感じさせて動けなくする。
……少しくらいなら、いいかな。
寧ろズボンにヨダレを垂らしてやる、と私は日向の体に背中を向ける形で横になり目を閉じた。
トン、トン……とまるで子供を寝かしつけるかのように一定のリズムを打つ手。
いつもはスーツの下に隠れているから、男にしては細いという印象しかなかったけれど、意外と硬くたくましい足。
疲れと心地よい風とそれらが合わされば、自然と意識は深くへと落ちていく。