愛してもいいですか



「……ん、」



ふと目を覚ますと、視線の上には本を片手にページをめくる日向の顔があった。

もう時刻は夕方となっているらしく、薄暗い部屋の中夕陽の明かりを頼りにその目は文字をなぞる。

下から見上げる私の視線に、日向は気付いたように本を閉じた。



「起きました?すみません、そこにあった本勝手に読ませて貰ってました」

「……えぇ、別にいいけど」



私の顔を見ながら、額にかかる前髪をそっとよけてくれる指先。

愛おしむようなその眼差しの優しさに、込み上げる言葉にならない気持ち。それを代わりに表すかのように、目から涙が溢れ出す。



「えっ……架代さん!?どうしたんですか!?」

「わ、わからない……なんでだろ、いきなり、」



何に対する涙なのか、分からず戸惑う私以上に戸惑う日向。泣き顔を見せぬように、日向とは反対方向に体ごと向きを変えた。

なんでいきなり、泣き出したりして……。だけど日向の顔を見ていたら、安心感と嬉しさが込み上げて涙が出た。

涙が横に流れて、日向の深緑色のズボンを濡らす。けれどそんなことを気にも留めず、頭を撫でてくれる大きな手。



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