愛してもいいですか



「仕事以外であれだけの格好をしているからまさかとは思ったが……やっぱりか、申し訳ないことをしたな」

「ちなみに結果その男とは話がなかったことになったそうで」

「え!?」

「まぁ神永さんのせいではないと思いますよ。遅かれ早かれそうなってたと思います」



落ち着いた言い方をする俺に、神永さんは「ならいいが……」と渋々納得する。



「……だが社長には悪いが、少し安心したな。その場の気持ちに流されず、社長として立派にやっていける……会社を持つ人間としては、心強い」



安心した、その気持ちは同じ秘書という立場同士同じらしい。

その気持ちは彼女にとっては失礼かもしれない。けど、そんな彼女だから俺たちは信頼して仕えることが出来るんだ。



「お前からしても一安心、と言ったところか?」

「……はは、かもしれませんねぇ」



その一言にどこまでの意味が込められているのかはわからない。けれど笑って流しているとポン、とエレベーターが止まった。



「神永さん、どうぞ。俺は上の階に行くので」

「そうか。じゃあな、社長にもよろしく伝えておいてくれ」

「はい。神永さんが『架代、愛してるよ』って言ってたって伝えておきます」

「怒るぞ?」



へへ、と笑う俺に、神永さんは呆れたようにエレベーターに乗り込んで行った。



……一安心、か。

その言葉の意味を考えて、小さく頭をかく。



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