愛してもいいですか
「大丈夫?」
「すみませんん〜……」
咄嗟に、細く小柄な彼女の体を、胸の中に抱くようにして受け止めた。
ってこんな姿、会社の誰かに見られでもしたら絶対変な噂になるな……。面倒なことになる前に、早く送り届けよう。
そうタクシーを探すように周りを見渡した、その時。
「……あれ、」
「え?……あ、」
ばっちりと目が合ったのは、ちょうど目の前を歩く架代さん。
カールさせた茶色い髪を揺らし、肩には黒いショルダーバッグ。その大きな目はいつも以上に大きく見開かれ、驚いたようにこちらを見る。
な、なんでここに架代さんが……もしかしてこんな時間まで仕事していた?大変だな、遅くまでお疲れ様です、……っていうか。
み、見られた……!!!
「あっあの架代さん!?これは、その……」
「……お疲れ様。じゃあね」
「あっ、ちょっと待って……」
今のこの状況を説明しようとするものの、それより早く架代さんはその場を立ち去ってしまう。
追いかけなきゃ、そう思うけれど、腕の中の女性社員は「ん〜……」と抱きつき動くに動けず……。
これは、もう確実に……誤解された……!!
それ以上追いかけることも出来ず、深い溜息がこぼれた。