愛してもいいですか
それから一晩が明けた、翌日。
「架代さん、おはようございます!」
今日もにこやかに社長室で出迎えた俺に、架代さんは無視するように顔を背けデスクへ向かった。
あぁ、久しぶりのこの嫌われっぷり……。最近ようやく嫌な顔をされなくなってきたと思ったのに……!
ピリピリとした空気を漂わせ、いかにも不機嫌といった顔でジャケットを脱ぐ姿に、背中にはだらだらと冷や汗が伝う。
「か、架代さん?昨日は随分遅くまで残ってらっしゃったんですねー……」
「……パソコンがフリーズしたから。予定より遅くなったの」
「へ、へぇ……あの、昨夜のあれはですね……」
取り敢えず誤解を解いておこう、と説明をしようとした俺に、架代さんはキッとこちらを睨む。
「別に。どうでもいいから説明しなくていい」
これまでにないほど、きつく冷たい目。
しょ、正直……怖い。どうでもいいって言いながらしっかり怒っているし!なんで!?なんでそんなに怒る!?やっぱりチャラい男は嫌いですか!?
どうすれば誤解を解いて、いつも通りに……いや、せめてこの怒りだけでも落ち着けられないものだろうか。
頭を悩ませる俺に、架代さんはカツカツとビールを鳴らし歩き社長室を出る。
「あれ?どこか行くんですか?」
「資料室。デザイン関係の本取りに行くだけだから、あんたはそこで待ってなさい」
「いえ!お共します!」
「来なくていい」
冷たく払われるもののめげずについていく俺に、架代さんは諦めたように資料室へ向かい歩いていく。