愛してもいいですか
そしてやってきた五階のフロアにある小さな資料室で、架代さんは少し室内を見回すと、探している本のある場所をすぐ目星つけたようで部屋の奥にある高い本棚へ向かう。
「どれ取るんですか?取りましょうか?」
「届くわよ」
ツン、とした言い方で堂々と手を伸ばすものの、取ろうとしている棚の本に、その手はあと数センチ届かない。
けれど俺に助けを求めるのは嫌なのだろう。彼女は少し高いヒールのまま、ぴょんっとジャンプをする。
「そんな靴で跳ねたら転びますよー?」
「もう、いちいちうるさいわね!ほっといて……っと、」
一度目は届かず、もう一回、もう一回、と繰り返しジャンプをして手を伸ばす。
……可愛いからこのまま見ていたいけど、そのうち本当に足を挫きそうだな。それはまずい、そう思い俺は後ろから近付き、手を伸ばしその目的の本をスッと取った。
「これですか?はい、どうぞ」
「なっ!」
一瞬ムッとしたような顔を見せたものの、本棚と俺の間に挟まれたその姿は、どう見ても可愛くしかない。
その魅力に惹かれるように、俺は彼女の頭にちゅ、と触れるだけのキスをした。
ふわ、と香るその髪の匂いはシャンプーの柔らかな匂いと、スプレーの少しツンとした匂い。