愛してもいいですか
「……そう、だったの」
「そうなんです。もう、架代さんってば早とちりして可愛いですねぇ」
いつもなら『可愛いってなによ!』と怒るなり照れるなりするだろう。けれど今はそれどころじゃないらしく、架代さんは本を両手で持ちぼそ、と呟く。
「……彼女いないって、意外」
「そうですか?あ、でも彼氏はいますよ?」
「え!?」
「嘘ですよ」
ってなんで信じるかなぁ……。俺、それっぽい?思わず苦笑いになると、その目はちら、とこちらを見た。
「どうして、彼女いないの?本命は作らない主義とか?」
「あなたは俺をなんだと思ってるんですか……。違いますよ、もっとマシな理由です」
「マシな理由、?」
女性と話すのは、好き。割とどんな子も可愛いと思う。だけど、恋人という存在がいない理由は。
「……恥ずかしくて誰にも言ったことないんですよねぇ」
「なによ、言いなさいよ。気になるでしょ」
「えー?どうしようかなー?」
「言いなさい。社長命令」
「職権乱用ですか!?」
普段はあんまり使わないくせに、こういう時に限って使うんだから……!
本棚と自分の間に彼女を挟んだまま、照れ隠しに髪をかく。