愛してもいいですか



「……あれ?」



ところが『全十二枚』と書かれた書類にも関わらず、書類が十一枚しかないことに気付いた。

九枚目が抜けている……。念のため他の書類の束も見てみるものの、それらしいものはない。



日向に聞こうかな、あ……でももう会議始まっている?

書類自体は経理部から回ってきているもの。なら日向に直接聞きに行って、もう会議が始まっているようだったら自分で経理部に回ろう。



そう考え私は社長室を出ると、四階のフロアにある秘書たちが集まる部署・秘書課へとむかうべく階段で下りる。

秘書課、秘書課……っと。小さなビルの社内とはいえ、日頃あまり顔を出すことのない部署。『秘書課』と書かれた部屋を見つけ、足早で向かう。



ドアが開いたままになっていることから、まだ会議は始まっていないのだとさとるとコソッと中を覗き込む。

日向、いるかな……。デスクの並ぶ小さなフロアの中には、数名の秘書課の社員たち。その隅に立つ日向を見つけた。

いた、そう声をかけようとよくよく見ると、日向の隣には女性社員が一人おり、なにやら話している様子だ。



邪魔しちゃ悪いかな……?

様子を伺うように見れば、日向と話す相手はベージュ色のジャケットに黒いインナー、そして同じく黒いパンツ、とスッキリとした服装の、細い体に小さな身長をした女性。

見た感じ私と同じ歳くらいだろうか。つぶらな瞳と大きめな口が印象的な可愛らしい顔をしており、茶色いふわふわと巻いた髪をポニーテールに結っている。


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