愛してもいいですか
「じゃあ書類、確かにお預かりしました」
「うん、よろしくね。……っと、日向くんネクタイ曲がってる」
「え?そうですか?」
書類を手にする日向に、彼女は日向の水色のネクタイに触れると真っ直ぐに整える。
背の高い日向に世話を焼く小柄な姿は、傍目から見ても可愛らしい。
「はい、出来た。社長秘書がネクタイ曲がってちゃみっともないでしょ、気をつけなきゃ」
「すみません、ありがとうございます」
「もう、おまけに頭に寝癖までつけて」
「ってそれはこういうセットです。うちの母親みたいなこと言わないでくださいよ」
二人はそうやりとりをしながら、あははと笑う。
……なんか、やけに親密?
日向が女性にベタベタするのはいつものことだけど、それとは違う、どこか敬いのような距離も保ちながら仲は良いというか。
相手もまた、日向にベタベタされてキャーキャー言う女性たちとは違く、はしゃぐわけでもなく、でも自分から日向に近付いているように見える。
なんとなくの私の受け取り方だけど、二人の光景はよくある『日向と女性』という光景とは少し違う気がした。
「あれ……宝井社長?」
「えっ!?」
そんな光景をドアの隙間から覗いている私に、室内にいた一人が気付き、思わず驚き声をあげてしまう。
当然それによって日向もこちらを見ると、私の姿に気付いた。