愛してもいいですか



「ご足労おかけしました。はい、じゃあ仕事の続きお願いしますね」

「言われなくても。あ、会議が終わったら、」

「餡子屋のたい焼き、ですか?」



『たい焼き買いに行ってきて』、まさしくそう言おうとした私の言葉を遮るように、日向は呟き笑う。



「……よく分かったわね」

「えぇ。架代さんのことはお見通しですから」



ふっと細めた目に私を映し、右手で私の頭をよしよしと撫でる。それだけの行為をして、日向は仕事へ戻るべく秘書室の中へと戻って行った。

……むかつく、なぁ。あの余裕と、分かり切ったような態度。



いつも何も分からずに、心揺れているのは私ばかりで、本当に悔しい。

昨日のことだって、やっぱり何も気にされてなんていなくて、安心するような悲しいような気持ちになる。



けど、触れる手が嬉しい。その笑顔が、愛しい。




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