愛してもいいですか



一方で離れないのは、彼女の睨むようなあの瞳。冷たくて、好意のかけらも感じられない。



「……あった。『西のぞみ』、これだ」



その後、社長室へ戻ってきた私は、パソコンに入っている社員名簿のデータを見ていた。

そこに表示されているのは『第一営業部・課長 西のぞみ』の文字と、先程の彼女の写真。

髪型が黒のロングヘアで少し印象が違うけれど、入社当時のものなのだろう。可愛らしい顔立ちはそのままだ。



「なになに……入社七年目の二十九歳、って私の二つ上?」



二十代でましてや女性で課長になるなんて、よっぽど仕事が出来る人なのね。社員情報を見れば、彼女は四年前まで広報部におり、それから営業部に異動となったらしく、どうりで見た覚えがあまりなかったのだと思う。



見た目は可愛いし、仕事は出来る……すごい社員もいるものだと、感心してしまう。

……あれ、ちょっと待って。



『俺が営業部にいた時に出会った人なんですけどね、俺より年下なのに仕事もテキパキ出来ちゃう人で』

『気付いたらその人は、若いのにすごい位置にいて』



日向が営業部にいた時に出会った……ということは、営業部の人間。日向より年下で、仕事も出来て、秘書が一番近くにいられる。

日向が先日言っていた憧れの人のこと。その話をひとつひとつ思い出しながら当てはめてみれば、彼女……西さんの姿になることに気付いた。


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