愛してもいいですか
「彼は、私達営業部の元でも立派に秘書としての役目を果たしてくれていました。先輩も後輩も彼を頼りにして、彼だから頼って……日向くんは、営業部を支えていた大事な存在なんです」
「そう……」
「それをわざわざ異動させて、いきなり部署の秘書を変えられて、迷惑を感じている社員の気持ちを考えたことがありますか?」
“日向だから”、そう頼る人たちの気持ちはどことなく私も分かる。
特に若い子たちは、先輩や上司に言いづらいことも日向になら言えただろう。日向自身もよく見ている男だから、何かがあればすぐに気付けただろうし。
『部署を支えていた』、それはきっと大袈裟な言い方ではないのだと思う。
「……突然秘書が変わったことに対して不便をかけさせているのは申し訳ないと思っているわ。だけどそれを私に言われても、日向を秘書に決めたのは私じゃないし、日向に代わって部署を支えるのが新しい秘書の役目だと思うけど」
社員たちの気持ちもわかる。けれどそれを踏まえた上で戸惑うことなく反論する私に、西さんはキッとこちらをより鋭く睨む。
「社長相手に失礼を承知で、率直に言います。あなたは、社長という立場で彼を縛っているだけなんじゃないですか?」
「え……?」
立場で、日向を縛っている……?
「彼だって本当は部署での仕事に戻りたいはずです。日向くんは、あなたの奴隷でもなければ執事でもない。あなたに気ままに遣われるだけの仕事なんて、日向くんにはもったいない」
日向も、本当は……私の秘書なんて、嫌?