愛してもいいですか



秘書相手に『抱いて』なんて、最低な自分。職権乱用にもほどがある。

社長という立場の私にもしっかり向き合ってくれた彼に、社長という立場を利用して跳ね除けた。



『出来るわけ、ないじゃないですか……』



出来ない?そんなこと、分かってるわよ。軽くても、チャラチャラしていても、日向はそんな人じゃない。

恋人でもない、ましてや好きでもない相手を抱くなんて、そんなことする人じゃない。



知ってるに決まっているじゃない。全て、分かってて言ったの。分かってたからこそ、言ったの。

……これで、私の秘書はクビ。理由がなくちゃ、クビになんて出来ないから。例え、こじつけだとしても。



「……本当、最低」



隠れるように入り込んだ、フロア奥の女子トイレ。その中で、子供のようにしゃがみ込むと、途端に視界は涙でいっぱいになった。

最低よね。幻滅した?嫌いになった?それならもういっそ、二度と近付かないで。

苦しいけど、痛いけど、日向の幸せを願うから。

苦しくて痛い心に、涙は止まらない。



いつの間にかこんなにも、あなたのことを好きになっていたんだ。





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