愛してもいいですか
泣いても泣いても、涙は止まらなくてそれほどまでに募っていた彼への想いの大きさを知る。
それは松嶋さんとさよならをしたあの日よりも苦しくて、やっぱり私は日向のことが好きなんだと、感じて、また苦しくなる。
だけど、あの日の憧れの人のことを語る日向の愛しげな眼を思い出したら、あの想いが私に向くわけがないと、そう思うから。
私は自ら動くしかない。
まともに眠れないまま夜を越え、迎えた翌朝。
私はカツカツカツカツと勢いのいい足音をたて四階のフロアの廊下を歩く。そしてやって来た先・秘書室でガチャンッと勢いよくドアを開けた。
「おー、おは……って、社長!?」
「ど、どうしたんですかいきなり!?」
まさか突然私が姿を表すとは思わなかったのだろう。秘書室にいた社員たちは全員目を丸くして驚きの声をあげる。
そんな声を気に留めることもなく、私はキョロ、とあたりを見回した。
日向……は、まだ来ていない。いつもなら来ていて当然の時間だけれど、昨日の今日だ。遅刻したって、休んだっておかしくない。
それについては私のせいでもあるから咎めたりはしない。寧ろ今この場にいなくて丁度いいとさえ思う。
「今営業部の秘書は、誰?」
「え?あ、私です……」
唐突な私の問いに小さく手を上げたのは、部屋の端にいた茶色いショートカットの女性社員。
ベージュ色のカットソーにチェック柄のダークグレーのスカートを履いた大人しそうな人だ。年齢は私と同じくらいだろうか。