愛してもいいですか



「あなた、名前は?」

「えっ、あ……市原です」

「そう、市原さんね。じゃあ今日からあなた私の秘書になってちょうだい」

「えっ……えぇ!?私がですか!?」



当然驚く彼女に周りの視線は向けられる。



「で、ですが営業部のほうは……それに社長には日向さんが、」

「日向を営業部の秘書にさせるわ。あなたの異動も日向の異動も本日付けよ。支度したら社長室まで来てちょうだい」



そして一方的に話を終えると、彼女の返事を聞くこともなく私はまたカツカツと来た道を戻って行く。

彼女、市原さんにはこちらの都合で迷惑をかけて申し訳ないけど……でも、これでいい。これで西さんも日向も幸せで、私だってせいせいする。

そう、これでいい。いいんだ。



そうエレベーターのボタンを押すと、ちょうど下から上がってきていたところだったらしいエレベーターは四階にポン、と止まる。

開いたドアの向こうにいたのは、日向だった。



「あ……おはよう、ございます」



驚いた様子でこちらを見て小さく頭を下げる日向は、あまり寝ていないのか目が赤い。



「あの、昨日のことなんですけど……」

「ちょうどよかった。今秘書課に行って話を済ませてきたところなの」

「え……?」

「今日から私の秘書は市原さんになったから。あんたは営業部に戻ってちょうだい」



平静を装って告げて、視線をそらす。


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