愛してもいいですか



「そうでしょう?架代社長でしたらきっと喜ぶと思ってました」

「えぇ、おいしすぎ!甘いしサクサクだしもちもちだし……本当最高!」



つい先ほどまで泣いていた人間とは思えないほどの変わりようだと自分でも思う。

けど、そんなことを気に出来ないほど美味しいのだから、食べる手は止まらずあっという間に一個を食べ終えてしまう。



「あ……社長、口元が」

「え?」

「食べカスがついてますよ」



神永はこちらへと手を伸ばし、私の口の端をそっと拭う。

初めて口元に触れる指先の感触。突然のその仕草に少し驚くものの、心は音を立てることはない。



……違う。日向に、触れられた時とは。

日向に触れられた時はドキッとして、恥ずかしくて、全身が熱くなった。当たり前だけど、彼とは違うんだ。そう感じて、一度は上がった気持ちがまた沈み出す。



「社長?」

「あ……はは、恥ずかしいなぁ。いい歳して」



その変化を感じ取ったのか、こちらの様子を伺う神永に笑顔を作ってみせるものの、分かり切ったように神永はふっと笑う。



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