愛してもいいですか
「神永さんと、ですか?まさかぁ」
「いや、でもなぁ……社内でも噂になってるぞ?この前その神永さんがうちの会社に来てた時に、泣いてる社長を抱き寄せるようにして二人で会社を出て行ったって」
「あ、私もその話聞きましたよ。その日だったか、二人でデートしてたらしいって」
「は……!?」
先輩に続き後輩からも出る噂話。だいたいこう言う話には尾ひれがつくものだから鵜呑みにするようなことじゃない、そうわかっているけれど……当然、冷静ではいられない。
架代さんと?神永さんが?付き合っている?デートしていた?
そんなのない、違う、誤解、けど、でも……。簡単に想像出来てしまう寄り添う二人の姿に、余計不安になってくる。
「やっぱり社長も女ってことだよなー」
「神永さんみたいな素敵な男性相手なら誰でも付き合いたくなっちゃいますって」
二人はそう言うだけ言うと笑いながらフロアを去って行った。人の出払っている今、その場には俺と西さんの二人だけが残される。
誰でも付き合いたくなる、か……。そうだよな、神永さんは大人だし冷静、背も高いしオールバックもよく似合う……けどやっぱり、彼女の隣に並ぶ姿だけは、想像したくない。