愛してもいいですか
「……神永さん、聞いてもいいですか」
「なんだ?」
「架代さんと付き合ってるって、本当ですか?」
「は?……はぁ!?何の話だ!?」
先程の噂をぶつける俺に、神永さんは意味がわからないといったように驚きを見せる。
いつも冷静なこの人もこんな顔するんだ、と思うと同時にきっと噂は噂でしかないのだろうとさとる。
「社内中の噂らしいですよ。神永さんが泣いてる架代さんを抱き寄せてたとか、デートしてたとか」
「なわけあるか!少しお茶をしただけで、あの時社長が泣いていたのにも理由があってだな……あぁもう、面倒臭い」
様々な理由があるのだろう、けれどそれを説明するのには時間もかかるらしく神永さんは途中で断念するように溜息混じりに髪をかいた。
「……その時の架代さんの涙と、俺が営業部に戻されたのは、関係があるんですか?」
「さぁな。お前が気にするべきことじゃないんじゃないのか?営業部に戻りたかったんだろう?」
「え?」
俺が営業部に戻りたかった……?なんて、言ったことなければ思ったこともないことに、俺はきょとんと首を傾げる。
「社長が言っていたぞ?『二人は両思いだから自分は邪魔だ』と。あぁ、あと『日向の憧れの人が西さんだってことくらいわかる』とも言っていたな」
「へ……?」
それはあの日俺が話した『憧れの人』のことを指しているのだろう。
その話が西さんのことだとか、俺と西さんが両思いだとかって……つまり、それは。
「完全に勘違いしてるじゃないですか……!!!」
「だろうな」
至った結論に、爽やかな冬の晴れ空とは打って変わって俺の心はサーッと血の気が引いていく。