愛してもいいですか
な、なんでそんな、俺相手が西さんだなんて言っていないよな!?
いや、確かに架代さんだとも言っていないけど……これまで散々モーションかけて、極め付けにあれだけ分かるような言い方したのに……なんでそこで勘違いするかなぁ!!!
「まぁ、さっさと直接気持ちを伝えなかった自分が悪い」
「そうかもしれないですけどっ……普通そこまで言えば分かるじゃないですか!!なんなの!?鈍感なの!?そもそも俺の選択肢に自分は入っていないとでも!?あぁもうそんな鈍いところも可愛いな!!」
「叫ぶな。うるさい」
そもそも、俺の好きな人が誰かを知っていながらその誤解を解こうとしない神永さんも、少し意地の悪い人だと思う。
けど今更そんなことを悔やんでも仕方ない。「はぁ〜……」と吐き出した深い溜息に、脱力したように俺はその場にしゃがみ込んだ。
なんだ、ってことは架代さんはその誤解から、良かれと思って俺を営業部に……?
きっとあの日の突然のことも、俺が出来るわけがないと分かり切っていたのだろう。
それでいて、こじつけでも俺が社長秘書をやめる理由をつくって、やめさせた。それも、自分に悪い印象が残るような形で。
……そんなことをされても、嫌いになれるわけなんてないのに。
あなたが俺のことを分かり切っていたように、俺だってあなたのことを分かっている。理由もなく抱いてほしがるような人じゃないって。
平気なふりをした、精一杯のその勇気を。