愛してもいいですか



「社長は『日向を縛らないでと言われた』とおっしゃっていましたが……私は、そう見えたことなど一度もありませんでした」

「え……?」

「日向は、社長に嫌われようと突っぱねられようと、いつも楽しそうでしたよ」



その言葉に、思い出す。



『たい焼き買って来て』

『はいはい、いつものですね』



私のワガママにも日向はいつだって笑顔で、寧ろ嬉しそうに動き回っていた。

仕事だから、きっと外面だけ。そう思う気持ちもあるけれど、でも、あの笑顔が作りものだなんて思えない。



「周りに言われたから、日向がそう思ってるかもしれないから。そう考えて諦めて、いいんですか?その心は、誰かと結婚して消えるものですか?」

「それは……」

「あなたの気持ちは、どこにあるんですか」



私の、気持ち?



「失礼致します、ご準備のほうが出来ましたのでお部屋へご案内致します」

「わかりました。行きましょう、社長」

「……えぇ」



話していると、トントンと小さくノックされる戸の音と共に先程の従業員の女性の声が響く。

それを合図に、神永は会話を終わらせると部屋を出た。


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