愛してもいいですか
「社員の皆さん、この人キツそうに見えて本当はこういう人なんです。会社のため、皆さんの働く環境を良くするため、皆さんのことを知りたいと、どうしたら近付けるかを必死に悩んでいます」
「え……?」
「なので怖がらず、意見を聞かせてもらえませんか。どんな些細なことでも構いません、ただ皆さんの仕事が少しでも上手くいくようにサポートさせてほしいだけなんです」
日向……。
そのにこやかな横顔が、真っ直ぐにみんなへかける言葉。それは私の気持ちを代弁し、しっかりと伝えてくれる。
そんな日向の言葉に、社員たちは顔を見合わせる。するとその中の一人、まだ若い女性社員は恐る恐る小さく手を上げた。
「あ……あの、」
「はい、どうぞ」
「企画部の安井です。えと、フロアのコピー機が古くて……出来れば見直しをして頂けたらと」
それをきっかけに、一人、また一人と手が上がる。
「残業手当について……」
「部署内のコミュニケーションが……」
設備の不調などの小さなことから、人間関係の少し重い話まで、少しずつ出る様々な意見。今すぐ全て解決は出来なくとも、一つ一つと向き合い話し合う。
次第に場の空気も和気あいあいとし、沢山の話をするうちに、気付けば時刻は終了予定時刻の午後十三時をとっくに過ぎていた。
「では、本日の会議は以上です。また何かありましたらお気軽に社長まで……は言いづらいでしょうから、自分や部署の担当秘書へ伝えてください」
日向の言葉で場を締めると、「ありがとうございました」、と一同は席を立った。