愛してもいいですか
「宝井さん、どうかしました?」
「え?」
その日の夜。銀座にあるとあるレストランで、目の前に座る松嶋さんは私の顔を見て不思議そうに首を傾げる。
「眉間、シワ寄ってますよ?」
「えっ!?や、やだ私ってば……」
つい頭に浮かんでいた、昼間の日向のチャラチャラとした態度。けれど今は、先日のパーティで出会った松嶋さんとのデート中だったということを思い出す。
「つ、つい仕事中のこと思い出しちゃって……ごめんなさい、すぐ顔に出ちゃって恥ずかしい」
「いいえ、仕事頑張ってる証拠ですよ。今日も一日お疲れ様でした」
慌てて右手で眉間を隠す私に、垂れ目の彼はふっと笑う。
あの婚活パーティの日から、およそ一ヶ月。その間度々連絡を取り合い会うようになった松嶋さんとは、今日が三度目のデートだ。
デートといっても、仕事の後に少し食事をして話すだけ。それだけでも彼の人の良さはよく分かって、会うたび惹かれている自分がいる。
二人きりとはいえ、がっついたり下心を見せたりしない紳士的なところもまた好印象だし。