愛してもいいですか
「英三社長の秘書を長年務めていらっしゃった関口さんは、架代社長もご存知ですね?」
「えぇ、私も子供の頃からよくお世話になって……あっ、そういえば関口さん、今年定年だった気がする」
「そうです。その関口さんの定年退職に伴い、新たな秘書として英三社長からご指名をいただきました」
定年退職する関口さんに代わり、神永が新しく父の秘書になる。それは私が社長になってから四年間秘書を務めた神永だからこそ、信頼して任せたのだろう。
……あれ?ってことは。
「私の秘書は、誰になるわけ?」
「そちらはご心配いりません。私のほうで新しい秘書を決めてありますし、明日から引継ぎ作業を開始致しますから」
「えっ、もう決めてあるの!?しかも私の意思はなく!?」
「えぇ。英三社長から私の判断で選んでいいとのことで。『架代はワガママだから秘書選びに時間がかかるだろう』と」
「うっ……」
さ、さすが父親…よくわかっている。
合う合わない、好き嫌い、そう言った点で人ひとりを選ぶのに時間がかかることを分かっているのだろう。ましてや完璧に仕事をこなす神永の代わりとなれば、相当出来る人間でないと満足しない。
それらを分かり切って先手を打った父に、反論出来ず黙る。