愛してもいいですか
「何を作るの?」
「とりあえず今日は肉じゃがで。あと野菜たっぷりの味噌汁も作ってあげますからね」
「……にんじんは入れないで」
「え?ダメなんですか?なんで」
「味が苦手だから」
「大丈夫ですよー、肉じゃがに入ったにんじんは甘くて食べやすいですから!あ、さすがに炊飯器はないので、ご飯は市販のもので」
話しながら、手際良くじゃがいもを洗い皮をむいていくその手。するすると流れるような手つきから、相当慣れているのだと思う。
そんな日向の手元を立ったまま眺めながら、私は口を開く。
「……本当、よく私の秘書なんて出来るわね」
「え?」
「さっきの、あの人たちの話」
『あんな傲慢そうな社長相手に、秘書もよく務められるよなぁ』
先程の男性社員の言葉を指して言う一言に、その視線はまな板の上のじゃがいもへ向いたまま。
「まぁ確かに、架代さんはワガママだし難しい人ですしねぇ」
「なっ!」
「けど俺、三人姉弟の末っ子でしてね。上二人がこれまた性格のきっつい姉なんですよ。だから、女のワガママには慣れてるっていうか」
お姉さんにも同じように……もしくはそれ以上に、よく使われていたのだろう。慣れてる、そう笑いながら今度はにんじんへ手を伸ばす。