愛してもいいですか
「日向」
「はい?」
「さっき、ありがとう。……嬉しかった」
「いーえ……、え?」
突然言った『ありがとう』の言葉に、私がそんなことを言うだなんて思いもよらなかったのだろう。日向は間抜けな声をこぼしこちらを見た。
「今……ありがとう、って、言いました?」
「言ったわよ、悪い?」
「い、いえ……びっくりして」
そういえばありがとうなんて、日向に言ったことなかったかもしれない。それにしてもここまで驚かれるとこちらも照れてしまうもので……。
「わ、私向こうで仕事の続きしてるから。出来上がったら持ってきて!」
「あっはい!」
「それと、」
「それと、?」
「……日向も昼食、まだでしょ。一緒に食べちゃいなさい」
少し照れながら言うものの、恥ずかしさにすぐその場を去ってしまう。
「っ……はい!喜んで!」
そんな私に、廊下まで響く大きな声で日向は嬉しそうに答えた。
じわり、じわりと近付く距離。その笑顔は驚くほどすんなりと心に入り込んでくるから、戸惑ってしまう時もあるけれど。
『架代さんの側で働けて、楽しいです』
そうやって、嬉しそうに笑うから。つい心を許してしまう。
漂い始める甘い匂いに、心の奥がほだされる。そんな自分がいた。