愛してもいいですか
街の中を歩いて行く、背筋の伸びた背の高い姿。それは会社で見るのとはまた違く見える。
こんな時間まで残ってるのね。思えば確かに、毎朝私が来るまでに細かな仕事は片付けてある。こうして夜まで残業して、朝も早くから来ているのだろう。本当、仕事に関しては真面目。
思わず感心しながら、ヒールの音をたてないように街を歩く。
そして歩くこと十数分。会社のあるオフィス街から一本入った道、そこに並ぶのはスナックや居酒屋などの小さな飲み屋たち。
こんな所にこんなに飲み屋なんてあったんだ。大通りには沢山あるけれど、中の方にもあるのは知らなかった。
けど、飲み屋のある通りに来たってことはやっぱり……。ホストか、人妻の相手か、想像をしながら歩いていると、突然日向は道を左へ曲がった。
この先にきっと、その正体が……!そう思わず早足で追いかけ、同じように左へ曲がる。
ところが、そこは真っ暗なただのビルとビルの隙間で、曲がったはずのその姿は目の前にない。
あれ?確かここに入ったはず……。
「なーにしてるんですか」
「えっ!?」
その声に驚き横を見ると、壁際に寄りかかり笑顔でこちらを見る日向がいた。
驚くわけでも怪しむわけでもないその様子から、恐らく私がつけていたのを分かっていたのだろう。