愛してもいいですか
そして、日向とともにやって来たのはそれから歩いてすぐの場所にある一軒の小さな居酒屋。看板には『呑み処・よっぺい』と書いてある。
「ここ…?」
ホストなどのイメージとは真逆な築二十年近くは経っているであろう、昔ながらの小さな店の戸をガラッと開けると、日向は慣れた様子で入って行く。
「いらっしゃい!おぉ、和紗!」
「どーも、今日も元気だねぇ」
「おっ、来たな和紗ー!遅ぇぞ!」
店内へ入った途端、わっと押し寄せて来るのは賑やかな声と焼き鳥の匂い。
黒いTシャツに頭にタオルを巻いた店主らしき中年の男性や、店内の奥の座敷の席に座るサラリーマンなど顔見知りらしい彼らは次々と日向を歓迎する。
「架代さん、カウンター席でいいですか?」
「え、えぇ」
引かれた椅子に座りながらそのにぎやかさに少し驚いていると、店内にいた彼らの視線は珍しいものを見るようにこちらへ向けられた。
「なんだなんだ、和紗!お前が女連れてくるなんて珍しいな!」
「しかも美人……どこで口説いた!」
「ちょっと会社で。ね、架代さん」
別にあんたに口説かれてついてきたわけじゃないんだけど。そう言い返そうとした言葉を飲み込み、男性たちへ小さく会釈をする。