愛してもいいですか
「おっちゃん、生ひとつ。架代さんはどうします?」
「じゃあ、同じので」
「はいよ、生ふたつね!」
「あと焼き鳥の盛り合わせとか、適当に」
スーツのジャケットを脱ぎながら注文を通すと、日向は「ふぅ」と一息つきながら首元のネクタイを緩め、ボタンを二つ外した。
初めて見る気の抜けた姿に、よほどリラックスしているのだろうと知る。
「もしかしていつも通ってるのって……」
「そう、ここです。入社してから通うようになって、かれこれ七、八年くらい」
それだけ通っている常連となれば当然みんな顔なじみなのだろう。答える日向に、奥にいたサラリーマンは既に酔っ払っている様子で後ろから日向の首元に腕を回す。
「多い時は週に四日は通ってるよなぁ。若いのがそんなんでいつデートしてるんだぁ〜?」
「だから彼女いないんですってば」
「そんな美人連れて彼女じゃないってか!このスケコマシがぁ!」
そう話しているうちに背後の戸は開き、一人、また一人と客が入ってくる。
「おっ、やってるねぇ。今日もうるせーなー」
「和紗ー!お前ちょっとこっちこい!」
そして日向を見つけた途端に、わいわいと騒いで奥の席へと日向を連れて行く。