愛してもいいですか
……すごい人気。可愛がられているんだなぁ。
たちまち人々の真ん中に囲まれるその姿に、会社でも外でも人懐こく好かれるタイプなのだと実感する。
一人カウンター席に座ったまま、いつの間にか出されていたおしぼりで手を拭いていると、目の前にずいっと出されたビールの入った大きなジョッキ。
「はいよ、姉ちゃん。生ビールね」
「あ……ありがとう、ございます」
それは店主である男性から差し出されたもので、彼は暑そうに首元にかけたタオルで額の汗を拭う。
「ったく、和紗の野郎も折角デートで来たのに彼女放ったらかしてしょうがねーなぁ」
「いえ、私は彼女ではなくて……その、上司といいますか」
「え?そうなの?和紗が女連れて来るなんて初めてだから、てっきり」
話しながらジョッキの中のビールを一口飲むと、冷たさがキンと喉に伝うのを感じた。
「そうなんですか?普段から女の子ばっかりと歩いているんじゃ……」
「いーや、全然。仕事帰りにここきて、二、三時間ああやって年上の奴らに絡まれて飲んで……女っ気なんてありゃしねぇ。顔はいいのに勿体無いよなぁ」
「……会社では、いつもチャラチャラしてるのに」
「あはは、そうらしいな!」
女っ気なんてない?あの軽い男が?ありえない、とでもいうように疑念の目で言う私に、会社での姿も話には聞いているのか、店主は大きな声で笑う。