愛してもいいですか
『架代、結婚しような。俺お前のためなら家事だってするし、何でもする。頑張るよ』
『えぇ、ありがとう』
『だからさ……金、貸してくれない?』
『……え?』
お金を貸してほしい、楽をしたい、将来は自分が社長に就きたい、そんな話ばかりが浮かぶ。
「そんな私に、松嶋さんは一人の女として見てくれる。社長でも関係ないって、言ってくれた」
『俺が出会ったのは、一人の女性としての宝井さんだから』
だから彼を、信じたい。
呟いた私に、日向は真面目な顔のまま。
「……一人の女性として受け入れてくれるからって、社長としてのあなたも受け入れてくれるとは限らないと思いますけど」
「え……?」
「見て見ぬ振りで目をそらしていると、いつか向き合った時に泣くはめになりますよ」
核心を突くようなまっすぐな目が、躊躇いなく心にぶつかってくる。
「……うるさいわね、余計なお世話!あんたなんかに聞いた私がバカだった!」
ふんっとふてくされたように歩き出す。
なによ、そんな何もかも分かっているような言い方して。見て見ぬ振りなんてしていない、彼にだってちゃんと伝わっているはず。大丈夫、大丈夫。
『忙しいですもんね』
『社長は大変だ』
思い出す悲しい顔に、また心は痛むけれど。