愛してもいいですか
「あの時から、変わらないですね」
「あの時?」
って、いつ?思い当たることも特になく首を傾げた。
「もう六年くらい前になりますかねぇ。架代さんが社員として働いていた頃、俺隣の部署にいたんですよ」
「え?そうなの?」
「はい。その頃俺も『隣の部署に美人がいるなー』くらいの認識だったんですけど、一回俺と架代さん廊下でぶつかったことがあって」
私が社員だった頃……ということは、日向も入社二年目くらいの頃。その頃誰かと廊下でぶつかった記憶は……当然ながら覚えていない。
そもそもあの頃は、先輩にいびられたり仕事が多かったりと慌ただしかったし。
「……覚えてない」
「でしょうねぇ。でもその時、俺が落としたデザイン案の書類見た時架代さんが『すごい!』って目キラキラさせていて。この人建築デザインが好きなんだろうなーって思ったのと、可愛い人だなーって思ったんです」
背後の外灯が、隣に立つその姿を後ろから照らす。
「その時から、俺の心にはあなたがいるんですよ」
その心に、私が?
なんて、口説き文句のような胡散臭い言葉。そんなことを平気で言えるなんて、やっぱり軽い男。
だけどその目は真っ直ぐで、その言葉が本心のようにすら聞こえてしまう。心に、真っ直ぐ響き渡る。