愛してもいいですか
「……なにバカなこと言ってるのよ、この酔っ払い」
「あはは、そうですね。酔っ払いです」
日向は笑いながら、左手で私の右手を握り歩き出す。
「酔っ払いだから、今だけ許してください」
手をつなぎ、数歩先を歩く。向けられた背中にその表情は見えないけれど、どうせまた読めない笑みを浮かべているんだろう。
酔っ払いが調子に乗って、手をつないだりして。本当、秘書だって自覚あるの?
……そう、思うけれど。
しっかりと握られた、この手を包むくらいに大きく熱い手。その指先が心をドキドキとさせて、絡みついて、離せない。
「……仕方ないわね」
今だけ、今だけ。特別に。触れるその手を許してあげる。
ドキ、ドキ、と鳴るこの心は、多分気のせいだということにして。