愛してもいいですか
俺の仕事場は、主に六階。エレベーターから降りてまっすぐ行ったところにある、社長室だ。
朝一番に、この部屋の窓を開けて空気の入れ替えをするところから俺の仕事は始まる。
まずは今日一日の社長のスケジュール確認。それと自分がやることの確認。室内の掃除をして、デスクに書類を綺麗に整えて用意して……。そうこうしているうちに時間はあっという間に過ぎ、朝八時すぎの彼女がやって来る時間になる。
カツカツカツ、と廊下から聞こえるヒールの音。きた、そう思うと同時にガチャリとドアが開けられた。
「おはようございます、架代さん」
「……おはよう」
満面の笑みで出迎える俺に対し、目の前のその顔はまるで不快なものを見るような嫌な顔つきとなる。
最初の頃と比べれば大分マシなほうになったとは思うけれど、それでもやはり笑顔には程遠い。
けれど、その長い睫毛と大きな目、グロスの光る小さな唇……と、すこし性格がきつそうにも見える綺麗な顔が、女性としてどうなのかと思うほど歪むのが俺にとっては面白くて仕方がなくて、へらっとますます笑えてしまう。