愛してもいいですか
「お茶、入りましたよ」
その姿に誘われるかのように、背後に回りデスクの端にカップを置きながら、俺は彼女の緩やかに巻かれた髪越しにその耳にチュッとキスをした。
香水だろうか、シャンプーか、ふわりと漂うバラのような匂いが鼻をくすぐる。かと思えばその瞬間、顔面へ勢いよく押し付けられた紙。
「ぶふっ」
「書類。終わったから持って行って」
「……はーい」
ようするに、『どこか行け』ということなのだろう。相変わらずツンとした言い方をする彼女に、俺は紙のぶつかった鼻をさすりながら大人しく社長室をあとにした。
彼女は、ガードが固い。馴れ馴れしく触れようものなら冷たく跳ね除け、こうして痛い目を見る。
そうやってあしらわれるやりとりも楽しくて、俺は懲りずについついまた触れてしまうわけだけれど。