愛してもいいですか
「お疲れさまです、失礼しまーす」
降りてきた三階にある『営業部』と書かれたフロア。そこで俺は先程架代さんから手渡された書類を手に部屋へと入った。
「おぉ、日向。お疲れ」
「お疲れさまです。こちら、社長からサインいただきましたので」
「おぉ、わざわざ悪いな」
その書類を受け取るのは、スーツを着たふくよかな中年男性。この営業部の部長で、俺が営業部にいた頃から何かと気にかけてくれる人だ。
一番上まで締めたボタンが相変わらず苦しそうな部長は、ニヤリと笑って丸太のような腕で俺を小突く。
「にしても、ついこの前まで営業部の社員だった奴が今では社長秘書とは……出世したなぁ、おい」
「あはは、運良くって感じで」
「でもあのワガママ娘の相手は大変だろう」
「言うほどワガママじゃないですよ。仕事自体は大変ですけどね」
笑顔で答えると、用事を済ませた俺は社長室へ戻るべく営業部のフロアを出る。