素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
阿部和馬は立ち上がって部屋の明かりを消した。正確には常夜灯だけにした。それはたぶん、私への気遣いだと思う。ただでさえ恥ずかしい私の気持ちを考えて……


「キスしていいかい?」

「う、うん」


阿部和馬の手が私の露わな肩に触れ、私がピクッと反応する間もなく、彼の顔が近付き、二人の唇が重なり合った。初めは触れるだけだったのだけど、次第にそれは深くなっていき、そのまま私はベッドに寝かされ、彼は私の上に……


「なるべくリラックスした方がいいよ」

「う、うん……」


乱れた息で答えれば、唯一私の体を隠していたバスタオルが、阿部和馬の手でスルリと剥ぎ取られた。咄嗟に胸を手で覆う私だったけど、その手はあっさりと阿部和馬に退かされてしまった。


「思った通り、綺麗な胸をしているね?」

「イヤ、見ないで……」

「恥ずかしがる事はないよ。むしろ感じた方がいい。でないと、なおさら痛いからね」


そうだった。初めてはとても痛いらしい。どのくらい痛いんだろう。私、痛いのって苦手なのよね……


「怖いかい?」

「少し……」

「なるべく痛くないようにするけど、ある程度は覚悟してほしい。いいかい?」

「うん……」


私は阿部和馬に全てを託す決心をした。あたかも、お医者さんに身を委ねる患者のような心境だ。


阿部和馬は手と口を使い、私の体のあらゆる部分に触れた。私は恥ずかしくて堪らなかったけど、不思議と嫌悪は感じなかった。それどころか、次第に体の芯が熱くなり、気が遠くなるようだった。

私、感じてるの?


「そろそろ行くよ」

耳元でそう囁かれ、脚を大きく開かされたと思ったら、次の瞬間、その根元に強い圧迫感を感じた。

ああ、いよいよなのね……

と思う間もなく激しい痛みに襲われ、思わず私は目をカッと見開いた。

想像以上の痛みだった。まるでナイフで刺されたような痛み。と言っても、そんな経験はないのだけど。

「ごめんな?」

と言う阿部和馬の汗ばんだ背中に手を回し、私は必死になって痛みに耐えた。

涙がとめどなく流れたけど、それが痛みのせいなのか、あるいは処女を喪失した事への感慨からなのか、自分でもよく分からなかった。

< 23 / 83 >

この作品をシェア

pagetop