素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
その晩、私はそのまま阿部和馬の部屋にお泊りしてしまった。

翌朝、二人で朝食を食べたりしたのだけど、お互いに口数が少ないと思ったのは私の勘違いではないと思う。

阿部和馬がどんな気持ちでいたかは分からないけど、私はとても照れ臭く、彼の顔をまともに見られなかった。相手は、私が生まれて初めて自分の全てをさらけ出した男なのだから、それは当然の事だと思うけれども。


阿部和馬は朝からコンビニのバイトがあるそうで、私は朝食を食べ終えるとすぐに自分の部屋に戻った。部屋に戻った時、実際はたった一晩空けただけなのに、何日も空けていたような錯覚を覚えたのはなぜなんだろう。


床にペタンと座り、昨夜の事を思い出したりしながらボーッとしていたら、電機屋さんから電話が来た。今日、こっちの都合さえ良ければエアコンの修理に来てくれると言う。


それはもちろん有り難く、二つ返事で修理をお願いしたのだけど、それは即ち隣の部屋、つまり阿部和馬の部屋に行く口実が無くなるという事で、となれば、今後私と阿部和馬が関わりを持つ事はもうないだろうと思う。たぶん。


床にクッションを並べ、そこにゴロンと横になって目を瞑ると、私はたちまち睡魔に襲われた。

確かに寝不足ではあるけど、それだけの理由ではないと思う。それは昔からの私の癖で、一種の逃避行動なのだと思う。

今回のそれが、何からの逃避なのかは分からなかったけれど……

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