素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
私はコンビニへ行き、買い物カゴを手に提げてお菓子を物色していた。すると、近くに高校生ぐらいの男の子が二人いて、突然、
「やべえ。店員に見られた!」
「逃げろ!」
とか言って、出口に向かって走り出した。すると、
「待て!」
という叫び声と共に、制服を着た男の店員がその男の子達を追い掛けていった。何事だろう、と思いながら店の外に目をやっていたら、まもなくして店員が一人で戻って来たのだけど、なぜか私を睨みながら真っ直ぐに近付いて来た。そして、
「君は逃げそびれたようだな?」
とか言って、店員は私の腕をムズッと掴んだ。そのコンビニには時々来るけど、今までは見た事のない店員だった。
「えっ?」
「店の商品を返してください。そうすれば、見逃してあげてもいい」
「な、何を……」
「そのコートの中に隠した物ですよ」
「はあ?」
「往生際が悪いなあ。コレだよ」
店員はそう言うと、私のコートの中に手を突っ込んだ。そして……
ああ、思い出すと腹が立つ。店員はなんと、私の胸を鷲掴みにしたんだ。トレーナーの上からだけど。
急な上に、あまりな事で私は声を出せなかった。不思議そうな顔をする店員。そして、こちらは見慣れた女の子の店員が駆け寄り言った。
「そのお客様は違いますよ。実は女性です」
と。後で思ったけど、“実は”ってどういう意味よ? 全く、失礼しちゃうわ……
それはともかくとして、涼にさえ触らせた事のない胸を、見ず知らずの男に鷲掴みにされた悔しさが沸々と湧き上がり、気づけば私は、その店員の顔面を思いっきり平手打ちしていた。
その無礼極まりない店員が、阿部和馬なのだった。
「やべえ。店員に見られた!」
「逃げろ!」
とか言って、出口に向かって走り出した。すると、
「待て!」
という叫び声と共に、制服を着た男の店員がその男の子達を追い掛けていった。何事だろう、と思いながら店の外に目をやっていたら、まもなくして店員が一人で戻って来たのだけど、なぜか私を睨みながら真っ直ぐに近付いて来た。そして、
「君は逃げそびれたようだな?」
とか言って、店員は私の腕をムズッと掴んだ。そのコンビニには時々来るけど、今までは見た事のない店員だった。
「えっ?」
「店の商品を返してください。そうすれば、見逃してあげてもいい」
「な、何を……」
「そのコートの中に隠した物ですよ」
「はあ?」
「往生際が悪いなあ。コレだよ」
店員はそう言うと、私のコートの中に手を突っ込んだ。そして……
ああ、思い出すと腹が立つ。店員はなんと、私の胸を鷲掴みにしたんだ。トレーナーの上からだけど。
急な上に、あまりな事で私は声を出せなかった。不思議そうな顔をする店員。そして、こちらは見慣れた女の子の店員が駆け寄り言った。
「そのお客様は違いますよ。実は女性です」
と。後で思ったけど、“実は”ってどういう意味よ? 全く、失礼しちゃうわ……
それはともかくとして、涼にさえ触らせた事のない胸を、見ず知らずの男に鷲掴みにされた悔しさが沸々と湧き上がり、気づけば私は、その店員の顔面を思いっきり平手打ちしていた。
その無礼極まりない店員が、阿部和馬なのだった。