素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「は?」


意味が分からない。曽根崎さんも私も、休まなければいけないほど疲れてるとは思えないし……

私が首を傾げていると、


「だってさ、君は酔ってるだろ? ワインを飲み過ぎて……」


と曽根崎さんは言い、ニヤッという感じで笑った。イケメンには似つかわしくない、ちょっと品のない笑い方で。


「私は大丈夫ですけど?」


そう。確かにワインはたくさん飲んだと思う。曽根崎さんから注がれるままに。顔が火照り、気分がふわふわしてるから酔っているのも確かだ。

でも、しっかり歩けるし、気分が悪いという事もない。従ってどこかで休む必要はないし、逆にもっと飲んでも大丈夫なぐらいだ。


「いやいや、無理しなくていいんだよ?」

「別に無理はしてませんけど?」

「へ? あ……ぼ、僕はダメなんだ」

「はい?」

「僕は飲み過ぎでね、ちょっと気分が悪いんだ。情けないけど。だから、どこかでちょっとだけ休みたいかなあ、なんて……」


という事らしい。曽根崎さんはあまりお酒に強くないのだろうか。見た感じではそんなに酔ってるようには見えないのだけど……


その時、私は“コレだ!”と思った。これは絶好の流れだと思った。曽根崎さんをあそこへ連れて行く流れとしては。

という事で、


「それでしたら、私の家で休まれますか? ここからかなり近いので……」


と言ってみた。

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