素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜

私の傍にいた男の子達は、なんとお店の商品を万引きしていたらしい。それを新人の店員である阿部和馬が見つけたのだけど、私がその子達の仲間だと思ったらしい。


それにしても、よくもそんな勘違いをしたものだと私は呆れてしまった。だって私は女の子だし、当時の歳は26で、たぶんあの男の子達とは8歳前後も違うはずだから。

という事は、阿部和馬には私がそう見えたという事になると思う。つまり、18歳前後の男の子に。だから胸の膨らみが、隠し持ったお店の商品によるものと思ったのだろう。

バッカじゃないの？

と思ったけど、私が男の子に間違えられる事自体はそう珍しい事ではない。とても残念な事ではあるけども。

私は昔からショートヘアで、殆どお化粧をしない。少し痩せ気味でお尻は小さく、顔を含めて全体的にボーイッシュだなと自分でも思う。胸だけはちょっと大きい方なのだけど。


阿部和馬をセクハラで訴えてやろうかと思ったけど、女の子の店員が平謝りするし、私もはずみとは言え阿部和馬を叩いてしまい、あいつの頬に私の手型が赤くついているのを見て、それは思い留まった。

でも、そうするべきだったのかなと後で後悔した。だって、当の阿部和馬は最初は驚き、次にニヤニヤ笑っていたから。私に叩かれた頬をさすりながら、ろくに謝りもしないで。憎ったらしいったらありゃしない。


とは言え、それだけならちょっとした嫌な出来事で済んでいたと思う。長い人生の、ほんの些細な一コマとして。ところが……

その阿部和馬が、よりにもよって私が住むアパートに引っ越して来たのだ。しかも、私の部屋のすぐ隣に……

もし神様がいるとしたら、神様って実はすごい意地悪なんじゃないかと、私はその時本気で思った。