素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「義姉さん、俺、この間兄貴と話したんですよ。実家に用事があって帰った時に……」
ローテーブルを挟んで裕子さんと向き合って座り、俺はそう話を切り出した。
「あの人と?」
「はい。兄貴はですね、義姉さんの浮気に気付いてるそうです」
ズバリそう言い、俺は裕子さんの反応を窺った。ところが……
「そう? やっぱりね……」
裕子さんは、顔色ひとつ変えずにそう言ったので、俺は拍子抜けしてしまった。てっきり、激しく動揺すると思っていたから。
「やっぱり、って……?」
「はっきり言われた事はないけど、気付かれてるのは分かってたわ。だって、私がここに来た後、あの人はどこへ行ってたのか私に聞こうとしないもの。それにあの人、お母様達に私の弁護をしてくれてるそうなのよね……」
「弁護、ですか?」
「そう。お母様は、たぶんお父様もだと思うけど、何も言わずにふらっと出掛ける私を怪しんでらっしゃるの。浮気してるんじゃないかって。ところが、あの人はそれを否定してくれてるんだって。“裕子は友達の家に行って、寂しさを紛らわしてるんだ”って。自分はそれを許してるから、お母様達も私を責めてくれるな、って……」
それは驚くべき話だった。だが一方では、なるほどなとも思った。あの時の兄貴の口振りを思えば……
俺には、到底理解など出来ないのだが……
「ねえ、あの人は和君に何て言ったの?」
ローテーブルを挟んで裕子さんと向き合って座り、俺はそう話を切り出した。
「あの人と?」
「はい。兄貴はですね、義姉さんの浮気に気付いてるそうです」
ズバリそう言い、俺は裕子さんの反応を窺った。ところが……
「そう? やっぱりね……」
裕子さんは、顔色ひとつ変えずにそう言ったので、俺は拍子抜けしてしまった。てっきり、激しく動揺すると思っていたから。
「やっぱり、って……?」
「はっきり言われた事はないけど、気付かれてるのは分かってたわ。だって、私がここに来た後、あの人はどこへ行ってたのか私に聞こうとしないもの。それにあの人、お母様達に私の弁護をしてくれてるそうなのよね……」
「弁護、ですか?」
「そう。お母様は、たぶんお父様もだと思うけど、何も言わずにふらっと出掛ける私を怪しんでらっしゃるの。浮気してるんじゃないかって。ところが、あの人はそれを否定してくれてるんだって。“裕子は友達の家に行って、寂しさを紛らわしてるんだ”って。自分はそれを許してるから、お母様達も私を責めてくれるな、って……」
それは驚くべき話だった。だが一方では、なるほどなとも思った。あの時の兄貴の口振りを思えば……
俺には、到底理解など出来ないのだが……
「ねえ、あの人は和君に何て言ったの?」