素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
阿部和馬から恰好がどうとか言われたけど、そんな事を気にしている場合ではなかった。

確かにショートパンツとVネックのシャツだけの恰好は薄着だし、胸元は胸の谷間が見えてるかもだけど、私としてはシャツもブラもパンツも全部脱ぎ、真っ裸になってしまいたいぐらいの心境だった。あまりにも暑くて。


「うるさいから、消えて」


私は意識して低い声を出し、阿部和馬に向かって言ってやった。ところが、


「エアコンが壊れたのか?」


こっちは不機嫌さを全開にしてるのに、阿部和馬がそれに怯む様子は全くなかった。


「そうよ」

「修理を頼めばいいだろ?」

「頼んだけど、すぐは来れないんだって。設置の方で忙しくて……」

「ああ、なるほどね。こう暑くちゃ無理もないな」

「じゃ……」


私は早々に部屋に戻ろうとしたのだけど、


「ちょっと待てよ」


阿部和馬に呼び止められてしまった。


「何よ?」

「俺にいい考えがある」

「いい考え? どんなよ? あんたがエアコンを直してくれるの?」

「まさか」

「だったら消えて。じゃあね」


暑さのせいだと思うけど、私は立っているのも辛く、ましてや阿部和馬とくだらないやり取りなんかしたくなかった。


「おい、俺はまだ何も言ってないだろ?」

「うるさいなあ。だったら早く言ってよ」

「よし、言うぞ。俺の部屋に来いよ」

「…………はあ?」


阿部和馬は、突然妙な事を言った。

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