素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「俺の部屋で涼めばいいだろ?」


ああ、そういう事ね。でも、阿部和馬なんかと一緒にいたくないし、常識的に考えて男の部屋に上がり込むのはまずいと思う。


「結構です。どこか冷房が効いた所へ行こうと思ってたから。ショッピングモールとか……」

「なるほど。一見いい考えだが、今、表を出歩くのはどうかと思うぞ」

「なんでよ?」

「分かってると思うが、外はめちゃくちゃ暑いんだ。しかも今のお前の状態じゃ、たどり着く前にぶっ倒れかねない」

「私の状態って……?」

「熱中症になりかけか、もしかするともうなってるんじゃないのか?」

「そ、そうなの?」


熱中症になった経験はないけど、確かに頭はボーッとするし、体がだるくて立ってるのも辛いほどだ。私、本当に熱中症にかかってしまったのかもしれない。

これから着替えをし、それもだるいのだけど、外に出て炎天下を歩く事を考えたら、それこそぶっ倒れるかも、と自分でも思った。


「意地を張らずに俺の所へ来いよ。エアコンをガンガンかけてやるから」

「…………」

「もしかしてお前、俺に襲われるとか心配してんのか?」

「べ、別に……」

「間違ってもお前相手にそんな気は起こさないから安心しろ」

「そんな心配してないわよ!」


本当はちょっと心配したんだけど。
ああ、やっぱりムカつくわ。この男……


「じゃあ何も問題ないだろ? 早く行こうぜ。お前、今にもぶっ倒れそうだ」

「わかった。着替えてくる……」

「今さらそんな必要ないだろ?」


それもそうか。第一、着替えるのも面倒だ。本当に倒れそう……

私はスマホだけを持って部屋を出た。そしてもちろん入った事のない、隣の阿部和馬の部屋へ……

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