素敵な勘違い 〜負け組同士のラブバトル〜
「待って!?」


私は、考えるよりも先に体が動いていた。そして気付けば、阿部和馬の背中にピタッと体を寄せていた。


「真琴……?」

「今、聞きたいの」

「だから、それは今度でいいって言ったろ?」

「わかった。でも……行かないで?」

「はあ?」

「もう少しここにいてほしいの。お願い……」


我ながら大胆な事をしてるとは思ったけど、私は阿部和馬に行ってほしくなかった。話をしなくてもいい。ただ、側にいてくれさえすれば……


「お前さ……」


阿部和馬は、私の手を解きクルッと振り向いた。


「俺の話をちゃんと聞いてたか?」

「え?」

「俺だって、男なんだぞ?」


ポカンと見上げる私に、阿部和馬は子どもを諭すようにそう言った。何だか知らないけど、阿部和馬がとても逞しく見えた。全てを託してしまいたいというか、何もかも委ねてしまいたいような、そんな気持ちがした。この人に……


「…………」

「わからない奴だなあ。俺に襲われてもいいのか?」


と言われた私は、迷わずこう答えた。


「いいよ。抱いて?」


と…………

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